「業務用 焼き芋機」で検索すると、出てくるのは通販サイトの商品一覧ばかりで、どう選べばいいかを説明したページはほとんどありません。
私は業務用の焼き芋機を作りながら、家族と焼き芋を売ってきました。壺を自作し、板金屋さんの炭焼き機を改造し、いまの焼き芋機にたどり着くまでに、方式はひと通り試しています。作る側と売る側の両方から、方式の違いと、選ぶときに見るところを整理します。
焼き芋機は、大きく4つの方式
石焼き(薪・ガス)。石の蓄熱でじっくり焼け、平置きなのでたくさん焼けます。軽トラに窯を載せれば、焼きながら流して売ることもできます。そのかわり、煙と騒音で苦情になりやすく、薪の扱いと温度管理にスキルが要り、燃料費も高め。向くのは軽トラの巡回とイベントです。
壺焼き(炭・ガス)。伝統的な焼き方で注目を集め、壺の遠赤外線で均一に焼けます。そのかわり、重くて運びにくく、陶器なので割れやすい。一度に焼けるのは8〜15本と少なく、理想を求めると1回に3時間かかることもあります。
オーブン焼き(電気)。火を使わないので安全で、温度管理が容易、自動で焼き上がります。そのかわり、水分が飛びづらく、ふかし芋のような仕上がりになりやすい。大型で運びにくく、屋外では発電機などの電源が要ります。向くのは店舗販売です。
炭火焼き(炭)。炭の遠赤外線で水分を効率よく飛ばし、外はカラッと、中はねっとりに焼けます。軽くて運びやすく、電源が要らず、燃料費も安い。一度に25〜30本焼けます。そのかわり、炭の扱いにコツが要ります。売り方を選びません。
私が作っているのは、4つ目の炭火焼きです。ステンレスの本体は4.5kg。中央で炭をおこし、まわりの網に芋を並べて、上下から焼きます。炭の扱いは、給気の仕組みで温度を作れるようにしたので、最初の数回で感覚がつかめます。
ドラム缶などの自作は、営業用となると耐久性・安全性・見た目の面で苦労が多く、おすすめしていません。
選ぶ基準は5つ
基準1 売り場に電源はあるか。屋外のイベントやマルシェは、電源がないか、有料で容量に制限があることが多い。出店したい場所を先に思い浮かべて、電源がなくても焼けるかを最初の判断にしてください。
基準2 ひとりで積み下ろしできる重さか。移動販売は、焼く前と後に、積む・運ぶ・設営する・片づける、が毎回ついて回ります。「壺に憧れていたけれど、重くて運べないのであきらめた」という相談は、何度も届いています。毎回の設営が苦にならない重さかどうかは、続くかどうかに直結します。
基準3 1回に何本焼けるか。いちばん大事な数字です。焼き芋は1回の焼成に時間がかかるので、「1回に焼ける本数×回転数」が1日の売上の上限を決めます。私の焼き芋機なら、Mサイズの芋で1回25〜30本、焼成は約100分、焼いて次を仕込むまで2時間ほど。8時間の営業で4回、1日およそ20kgが目安です。1日に売りたい量から逆算して、容量を決めてください。
基準4 燃料は1回いくらか。炭火焼きでオガ炭なら、1回の焼成でおよそ500g、100〜150円。1本あたり4〜6円です。電気・ガスは地域の料金で変わりますが、どの方式でも「1回の焼成あたりいくらか」に直して比べると、判断を間違えません。
基準5 消耗部品と、保証と、相談先。網は消耗品なので、交換部品が手に入るか。素材はステンレスならサビに強く、芋の蜜汚れも落としやすい。そして保証。業務用は「壊れた=営業できない」なので、保証期間と、困ったときに聞ける窓口があるかは、価格以上に重要です。
味は、温度を途中で変えられるかで決まる
さつまいもの甘さは、デンプンを麦芽糖に変える酵素が働く温度帯を、どれだけ長く通るかで決まります。低めの温度でじっくり糖化させ、最後に温度を上げて水分を飛ばし、香ばしく仕上げる。この温度の流れを作れるかどうかが、方式の違いです。
石焼きは蓄熱でじっくり焼くのが得意な反面、途中で温度を大きく変えるのは苦手です。電気は温度を数字で管理できる反面、水分が抜けず、香ばしさが出ません。炭火焼きは、炭の火力を給気で調整できるので、低温の糖化から高温の仕上げまで温度を途中で変えられます。私の焼き芋機の3段階(150℃以下で60分→170〜190℃で30分→保温10分)は、この考え方で行き着いた製法です。壺焼きと石焼きの違いは、別の記事で開業目線で比べています。
よくある間違い
- 「訳あり品やB品で十分」と考える。曲がりなどの形は問題ありませんが、大きさは別です。大きすぎる芋は水分が飛びづらく、小さすぎる芋は傷みが早くてロスが増えます。基本はMサイズ(160〜240g)。品質の落ちた芋は、どう焼いても甘くなりません
- アルミホイルに包んで焼く。水分が抜けず、香ばしさが出ません
- 高温で焼き始める。糖化の温度帯を飛ばしてしまい、甘くなりません
- うまく焼けない焼き芋機を使い続ける。温度を作れない構造は、腕では補えません
- 最初から壺やキッチンカーを買う。小さく始めて、売れる場所が見えてから広げても遅くありません
まとめ
焼き芋機は、開業の買い物の中でいちばん大きく、いちばん長く付き合う道具です。電源、重さ、1回に焼ける本数、燃料費、保証と相談先。この5つを、カタログの数字ではなく、自分の売り場で毎週使っている姿を思い浮かべながら確かめてください。
開業全体の手順は、7ステップにまとめています。1台をフル稼働させた日にいくら残るかは、開業試算シミュレーターで試せます。
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