焼き芋機を決めて、芋の仕入れ先も見つけた。道具もそろった。それなのに、営業開始の直前で手が止まる——「で、どこで売ればいいの?」。工房に届く相談でも、いちばん多いのがこの「場所」の悩みです。
私は家族で焼き芋を売りながら、業務用の焼き芋機を作ってきました。シリーズ累計300台超の焼き芋機を全国のオーナーさんに使っていただく中で、「最初の1件がどうやって決まったか」という話をたくさん聞いてきました。売り方は、大きく3つあります。順に説明します。
売り方1. 私有地に据えて売る(本命)
いま焼き芋を売っている人の主戦場は、私有地です。
- 自宅の敷地や自分の店先:交渉はいらない。最初の一歩に向く
- スーパーや商店の店先:店主に声をかける。集客力があり、定期出店の本命になりやすい
- 施設や月極駐車場の一角:管理者や地主に相談する。空いているスペースの活用を歓迎されることもある
どれも私有地なので、保健所の届出を済ませたうえで持ち主の了解が取れれば、すぐに売り始められます。場所は検索して見つかるものではなく、声をかけて生まれるものです。
声をかける相手は、店主本人に決裁権がある個人商店・青果店・酒屋が話が早いです。ガソリンスタンド・園芸店・直売所は客層が近く、店先に余白があることが多い。月極駐車場や空き地は、看板の管理会社経由で地主につないでもらいます。大手チェーンのスーパーは本部案件になりがちで時間がかかるので、地場のお店のほうが現実的です。
行くのは平日の、店が空いている時間帯。開店直後か、14〜16時ごろです。名前・連絡先・売りたい曜日と時間を書いた紙を1枚持っていくと、店主が家族や本部に相談するときにそのまま使ってもらえます。
言い回しは短く、条件はあとから、相手のメリットを一言。
「週末の午後だけ、店先の一角をお借りして焼き芋を売らせていただけませんか。場所代はご相談させてください。」
先方のメリットは3つあります。店の前に人の流れができること、焼き芋の匂いがそれ自体いちばんの看板になること、空いていたスペースが場所代を生むこと。火を使う商売なので、「消火の備えをしたうえでやります」と自分から先に言うと、相手の不安がひとつ減ります。
断られるのが普通です。感触が悪ければ「ありがとうございました。またご縁があれば」と、さっと引く。地域で商売をするなら、断られた相手とも今後ずっと顔を合わせます。10件声をかけて1件決まれば上出来、くらいの気持ちで数を当たってください。
売り方2. イベント・マルシェに出る
集客を主催者がしてくれるので、売る経験を積むには最良の場所です。出店料はかかりますが、地域の小さなマルシェなら数千円から。最初は出店料の安いところで、焼く回転と接客に慣れていくのが定石です。
売り方3. 昔ながらの巡回スタイル
軽トラの焼き芋屋さんや豆腐屋さんのように、車で住宅地を流し、お客さんの求めに応じて短時間停まって売る売り方もあります。道路交通法で警察署の許可が要るのは「場所を移動しないで、道路に露店や屋台を出す」行為で、流しながらの販売は基本的に許可なしでできます。駐停車禁止の場所には停められないこと、一か所に長く停まれば露店と同じ扱いになることだけ、頭に置いておいてください。
このスタイルで大事なのは、走行中は焼けないことです。だから巡回する日は、自宅や拠点で焼いてから、保温して回る形になります。私の焼き芋機は、焼き上がった芋を石を敷いた保温鍋に移し、本体の余熱で温かいまま保てます。焼く場所と売る場所を分けられるのが、この売り方の特徴です。
なお、路上に露店を構えて売るには警察署の道路使用許可が要り、慣習上出店してきた場所以外で新規に認められることはまずありません。ここは選ばないでください。
自宅の敷地で売るときの作法
交渉のいらない自宅の敷地は、最初の一歩として本当に優秀です。自宅前の週末営業なら、10万円台からのスタートも現実的です。住宅街で守ることは3つ。
- 始める前に、両隣・向かい・裏のお宅に一声かける。「週末に自宅前で焼き芋を売ります。煙や匂いで気になることがあったら言ってください」。焼き上がりを一本持っていくのもいい
- 火起こしのときだけ煙が出るので、営業開始よりだいぶ早めに済ませ、洗濯物の時間帯を避ける
- 台や看板を歩道に出さない。線一本でも敷地の内側で
決まったら、条件をメッセージで残す
店先や駐車場の話は、たいてい口約束で始まります。それでいいのですが、あとで「言った・言わない」にならないように、決まった条件を一度だけ文字にして、LINEかメールで送っておきます。曜日と時間、場所代、炭を使うことの了解、雨天中止の連絡方法、駐車位置とゴミの持ち帰り。
「本日はありがとうございました。毎週土曜の12時から17時、場所代は◯◯で、炭火の使用もご了解いただいたと理解しています。来週からよろしくお願いします」——この一通で十分です。
まとめ:場所探しは、最初の営業活動
出店場所は、声をかけて生まれるものです。断られながら声をかけた経験は、開業後にお客さんへ声をかける力に、そのまま変わります。そして1件目さえ決まれば、2件目はぐっと楽になります。「◯◯さんの店先で毎週売っています」という一言が、次の交渉では実績と信用になるからです。
まずは自宅前でもいい。小さくても「売っている場所がある」状態を、先に作ってしまいましょう。開業全体の手順は、7ステップにまとめています。
参考にした公的情報
※ 道路や自治体の運用は地域によって異なります。最終的な判断は、管轄の警察署・保健所および土地の所有者・管理者に直接ご確認ください。
Free Email Course
壺いらずで、
工房からの手紙、
この記事の続きは、
登録後すぐ、第1通が届きます。
ご登録いただいたメールアドレスは、
ご登録ありがとうございます
第1通「私が焼き芋にのめり込んだ、最初の一本」を、たった今お送りしました。
▶ 焼いている様子を見る(動画)
届かない場合は、迷惑メールフォルダをご確認ください。
第2通は、明日届きます。