焼き芋の商売を考え始めた人が最初にぶつかるのが、「これって許可がいるの?」という疑問です。ネットには「許可不要」と書く記事と「許可が必要」と書く記事が混ざっていて、初めての人ほど混乱します。
先に結論を言うと、丸ごとのさつまいもを焼いてそのまま売るだけなら、多くの場合「営業許可」は不要で、保健所への「営業届出」の対象になります。ただし売り方を少し変えると「許可」の世界に入りますし、細かい運用は自治体で差があります。
私自身、販売を始める前に区役所へ確認し、届出をして売ってきました。この記事では制度の全体像と、実務でつまずきやすいポイントを、公的機関の出典付きで整理します。
まずは結論の早見表
| 売り方 | 必要な手続き(標準的な運用) |
|---|---|
| 丸ごと焼いて、そのまま売る | 営業届出(許可は不要のことが多い) |
| カットして提供する・バターやアイスをのせる | 飲食店営業などの許可が必要になる方向 |
| 冷やし焼き芋・真空パック等に加工して売る | 内容次第。必ず保健所に事前相談 |
| 未開封の市販菓子などを一緒に売るだけ | 届出のみ、または届出不要の場合も |
※ この表はあくまで入口の目安です。同じ売り方でも自治体によって整理が違うことがあるため、最終判断は必ず出店地を管轄する保健所への確認でしてください。窓口は自治体により保健所・区役所などの担当課に分かれます。
2021年6月の法改正で「届出」という区分ができた
2021年(令和3年)6月1日に施行された改正食品衛生法で、食品の営業は次の3つに整理されました(厚生労働省のリーフレット)。
- 許可業種 …… 飲食店営業や菓子製造業など、政令で定められた32業種。施設基準を満たし、保健所の許可を受ける
- 届出業種 …… 許可までは不要だが、保健所に「届出」が必要な営業
- 届出対象外 …… 常温で長期保存できる包装食品だけを売る場合など
焼き芋のように「素材を加熱してそのまま売る」商売は、調理して提供する営業(=許可業種)には当たらず、届出業種として扱われるのが標準的な運用です。たとえば宮城県は、移動販売の案内で「焼き芋、ゆでとうもろこし、甘栗……等は営業許可対象ではなく、営業届出対象又は届出不要」と明記しています(宮城県の案内ページ)。水戸市もイベント出店の案内で「焼き芋等許可が不要なもの」と例示しています(水戸市の案内)。
私が届出をしたときは「野菜果物販売業」という区分で整理されました。焼き芋はこの区分で扱われることが多いようですが、呼び方や当てはめは自治体で違うことがあるので、窓口で「さつまいもを焼いて、切らずにそのまま販売します」と売り方を具体的に伝えるのが確実です。
届出は「無料・更新なし」。ハードルは高くない
「保健所」と聞くと身構えるかもしれませんが、届出は許可に比べてずっと簡単です。
- 手数料はかからない(大阪市の案内では手数料なし・有効期限なし=更新不要と明記。大阪市のページ)
- 施設基準の審査もない
- 提出内容は、氏名・営業の形態・主に扱う食品・食品衛生責任者の氏名など
- 窓口のほか、国の「食品衛生申請等システム」からオンライン提出もできる
食品衛生責任者は「届出だけ」でも必要
見落としやすいのがここです。営業届出をする場合も、食品衛生責任者を置く必要があります(届出事項に責任者名が含まれます)。
調理師などの資格がない人は、各地の食品衛生協会が開く養成講習会(1日・約6時間)を受ければ取得できます。費用の一例として、東京都食品衛生協会は受講料12,000円です(東京都食品衛生協会)。最近はeラーニングで受講できる地域も多いので、平日に時間を取りにくい会社員の方でも取りやすくなりました(日本食品衛生協会のeラーニング案内)。
講習は1日で終わりますが、開催日程は地域によりまちまちです。開業準備の早い段階で申し込んでおくことをおすすめします。
どこからが「許可」になるのか——境界線に注意
つまずきやすいのは、売り方を広げたときです。
- カットして出す、バター・はちみつ・アイスなどをトッピングする、その場で食べる前提の提供をする …… 「調理して提供する営業」に近づき、飲食店営業などの許可(と、許可基準を満たす設備)が必要になる方向です
- 冷やし焼き芋・真空パック・干し芋などの加工品 …… 製造・表示のルールが関わります。可能な場合もありますが、条件が自治体・売り方で変わるため、始める前に保健所へ相談してください
- 車の中で調理して提供するスタイル(キッチンカー的な営業)は、自動車営業としての許可区分になります(東京都の自動車営業の案内が区分の考え方の参考になります)
「焼き芋だけなら届出、手を加えたら許可の世界」。ざっくりこう覚えておいて、メニューを広げたくなったタイミングで、その都度保健所に確認するのが安全です。
忘れずに: 税務署への開業届
保健所とは別に、事業を始めたら税務署へ「個人事業の開業届出書」を出します。事業開始から1ヶ月以内・手数料無料で、e-Taxでも提出できます(国税庁の案内)。副業として始める場合も、青色申告を考えるなら早めに出しておくと選択肢が広がります。
実際にやってみて感じたコツ
最後に、書類の話ではなく実務の話を少しだけ。
- 電話で事前相談してから行く。「さつまいもを焼いて、切らずにそのまま移動販売したい」と具体的に伝えると、必要な手続きをその場で整理してもらえます。ぼんやり「焼き芋屋をやりたい」と聞くより話が早いです
- 出店地ごとに管轄が変わることに注意。届出の考え方や様式は自治体単位です。複数の市区町村で売るつもりなら、それぞれの管轄保健所に確認してください
- 窓口の方は敵ではありません。むしろ「後から困らないように」教えてくれる味方です。臆せず聞いてください
許可・届出は最初の一回だけの手続きです。ここを越えれば、あとは焼く練習と売り場探し。全体の手順は「焼き芋屋の始め方|開業までの7ステップ」にまとめています。
参考にした公的情報
- 厚生労働省「令和3年6月1日から営業届出が必要になる場合があります」(リーフレット)
- 厚生労働省「食品衛生法等の一部を改正する法律について」
- 宮城県「自動車を利用して食品の調理・販売を行う場合の手続きについて」
- 東京都「食品衛生の窓」自動車での営業
- 大阪市「営業届出制度について」
- 水戸市「イベント等で食品を取り扱うみなさまへ」
- 国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
- 日本食品衛生協会「食品衛生責任者養成講習会 eラーニングのご案内」
※ 本記事は2026年7月時点の公開情報と自身の経験に基づく一般的な解説です。制度の当てはめは自治体・売り方によって異なるため、開業前に必ず管轄の保健所・税務署にご確認ください。