「みんな、どこで芋を買っているんですか?」
始める前の方からも、始めたばかりのオーナーさんからも、よく届く質問です。意外に思われるかもしれませんが、焼き芋でいちばん難しいのは、焼き方ではありません。仕入れです。そして、ここを正直に語っている人は、ほとんどいません。
私は家族で焼き芋を売りながら、業務用の焼き芋機を作ってきました。シリーズ累計300台超の焼き芋機を全国のオーナーさんに使っていただいていますが、仕入れでは私自身、人より多く失敗しています。
メルカリでお芋を注文したら、届いた一箱が全部カビていました。丸ごと捨てました。近所の八百屋さんにも相談しましたが、「焼き芋用」という意図がうまく伝わらず、蜜芋になる確率が安定しませんでした。使えないものを仕入れたことは、何度もあります。
難しい理由は、はっきりしています。甘さや熟成度は、生の見た目では分かりません。同じ品種、同じ地域でも、畑ごとに仕上がりが違います。八百屋さんは「食卓用」の目線で仕入れていて、「焼いて蜜が出るか」という目線とは少し違うのです。だから、選び方に基準が要ります。
選ぶ基準:品種は紅はるか。その中で、銘柄と安定
品種は、甘さで選びます。焼き芋のために生まれたと言ってもいいほど甘いのが紅はるかで、おすすめです。ただ、同じ紅はるかでも、産地と銘柄で別物になります。銘柄は、同じ品種の中で産地や生産者が付けたブランド名で、指名して仕入れると、売る側も安心して出せます。私の経験で年間を通して品質が安定しているのは、紅霧島や葵はるかです。どちらも紅はるかの銘柄です。
仕入れで大事なのは「安定」です。年間を通して手に入るか。そして、前回はおいしかったのに今回はいまいち、という注文ごとのばらつきがないか。同じ品種、同じ銘柄、同じ生産者さんでも、たまに起きます。
サイズは、最初のうちはM(中)が扱いやすいです。大きい芋も小さい芋も焼けますし、おいしく焼けます。ただ、大きい芋は水分が飛びにくく、小さい芋は傷みが早いので、慣れるまではMのほうが焼き加減も仕入れも読みやすい、というだけです。
そして、最初からいちばん安い仕入れ先を探さないこと。まず、品質の安定した仕入れ先で「売ること」に慣れる。売れる量が見えてから、仕入れを良くしていく。「まず売る。量が見える。仕入れを良くする」。この順番が、いちばん無理がありません。
買う場所と、値段の目安
| 買う場所 | 目安 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 産地のネット直販・ブランド芋の公式サイト | 送料込みでキロ400〜500円ほど。訳あり(規格外)はもっと下がることもあるが、サイズが混ざる | 銘柄と品質を指名したい。小口で試したい。遠くの産地から取り寄せたい |
| 八百屋さん・青果市場 | キロ350円ほどで買えることもある | 近くで量を買いたい。「焼き芋用」と伝わる相手が見つかれば強い |
| 農家さん・直売所・農協 | 相手次第 | 通える距離にある。顔なじみになってからの話 |
候補は2つ以上持ってください。時期や品種によって品薄は起きるので、開業月から逆算して早めに確保します。ネットの産地直送は時期によって取り扱いと納期が変わるので、注文の前に確かめてください。訳あり品でも、きちんとした品種と銘柄のものなら問題ありません。避けるのは、銘柄が不明で、安さで選ぶことです。
ネットで買うときも、注文のメッセージ欄に「焼き芋屋をやっています」と一言添えてみてください。生産者さんから、直接取引の案内が来ることがあります。私も、メルカリで買った箱に手紙が入っていたり、購入後のメッセージに書いてあったりしました。次からは直接、少し安く、という話につながります。
順序:少量で焼き比べてから、量の話
仕入れ先を決める前に、少量を取り寄せて焼き比べてください。芋の質は、焼き方より結果を左右します。味が決まったら、その仕入れ先で売り始める。売れる量が読めてきたら、量をまとめて条件を良くする。農家さんや直売所は、通って顔なじみになってから「秋からこれくらい使いたい」と一声かけておくと、話が通りやすくなります。秋になってから探すと、良い芋から先に行き先が決まっていきます。仕入れは、夏の仕事です。
受け取ってから焼くまで
さつまいもは生きているので、買いだめはできません。寒いと傷み、暑いと芽が出ます。家で置くなら涼しい場所で、段ボールは穴を開けて蓋を開け、芋と芋の間に紙を挟んでおくと、カビと傷みを防げます。きちんと置いておくと品質が安定し、熟成が足りない芋も、置いている間に甘さが乗ってきます。
仕込みは、洗って、へたを切るだけです。ただ、早く切ったり洗ったりすると提供までに傷むことがあるので、焼く直前にします。難しければ、朝にまとめて。切った断面は、見てください。さつまいもは端から傷むので、断面が傷んでいないか、時間とともに色が変わらないか。お客さんに出す前の、最後の確認になります。
供給の背景
農林水産省の統計では、2025年産のさつまいもの収穫量は約70万トン(前年比2%減)と、緩やかに減っています。産地は鹿児島・茨城・千葉・宮崎の4県で全国の約8割です。サツマイモ基腐病への対策も続いていて、産地で被害が出れば、その年の相場と入手しやすさに影響します。一つの仕入れ先に全部を頼らない。候補を2つ以上持つ理由は、ここにもあります。
まとめ:仕入れは、軽そうで重い
品種は紅はるか。その中で銘柄を指名し、安定した仕入れ先を選ぶ。まず売って、量が見えてから良くしていく。私が実際に取り寄せて、味と品質と取引のしやすさを確かめた仕入れ先のリストと、八百屋さんや市場に相談するときの相談書は、購入者さんにお渡ししています。私の失敗は、先に済ませてあります。
開業全体の手順は焼き芋屋の始め方|7ステップ、最初にかかるお金は開業資金の記事に書きました。
参考にした公的情報
※ 相場や取引条件は、年・地域・相手によって変わります。
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