「壺焼き芋 石焼き芋 違い」で検索すると、この2つを比べる記事が並びます。ただ、食べる人向けの読みものが多く、商売として選ぶ人向けの比較はあまり見当たりません。そして、開業する人にとっての選択肢は、実は3つあります。壺焼き、石焼き、そして炭火で焼く炭焼きです。
私はもともと壺焼き芋の味に憧れて、壺を自作するところから始めました。思うような味が出ず、試行錯誤の末にたどり着いたのが、ステンレス製の炭火焼き芋機で焼く炭焼き芋です。この記事では、3つの方式を開業目線で正直に比べます。
味の仕組み——3つの方式
壺焼きは、壺の底で炭を熾し、芋を壺の中に吊るして焼く方式です。熱した壺の内壁から放射される熱で焼くので、皮はカラッと、中はねっとりに仕上がります。
石焼きは、熱した小石の上で芋を焼く方式です。石が熱をため込んで温度の変化をゆるやかにするので、甘みをつくる酵素がよく働く温度帯を長く通せます。昔ながらの軽トラの焼き芋屋さんはこの方式で、皮までしっとり、やわらかい仕上がりです。ただ、石の温度は急には上げ下げできません。最後に温度を上げて水分を飛ばす、といった温度の切り替えは苦手です。
炭焼きは、炭火の遠赤外線で芋を直接焼く方式です。私の焼き芋機の場合、ステンレスの本体の中央で炭をおこし、そのまわりの網に芋を並べて、上下から焼きます。仕上がりは壺と同じく、外はカラッと、中はねっとり。炭の火力は給気で調整できるので、温度を途中で変えられます。150℃以下で60分じっくり糖化させ、170〜190℃に上げて水分を飛ばして香ばしく仕上げ、最後に保温で落ち着かせる。この3段階は、工房で行き着いた独自の製法です。
つまり3つの違いは、味の好みというより、温度を途中で自在に変えられるかどうかにあります。
商売として見ると、違いがはっきり出る
味の話とは別に、開業目線で差が出るところがあります。
- 一度に焼ける本数:壺は1回に最大15本ほど。石焼きの窯や機械は大きさ次第。私の炭火焼き芋機は1回25〜30本
- 重さと運搬:壺は重く、陶器なので落とせば割れる。石焼きの機材は石の量のぶん重くなる。ステンレスの本体なら4.5kgで、ひとりで車に積める
- 見た目:壺はそれ自体が看板になる。ここは壺の強みです
日本の焼き芋の歴史でも、壺焼きが先に広まり、その後に石焼きが主流になったと言われています。壺は一度に焼ける本数が少なく、重くて割れる。移動しながら量を売る商売には石焼きが向いていた、というのが理由のひとつです。「憧れの味」と「商売としての回しやすさ」は、必ずしも一致しません。
壺でも石でもない道に、たどり着いた理由
正直に書くと、私は壺で散々失敗しました。味が安定せず、重くて運べず、割れる心配が消えない。それでも、壺で焼いたときの、外はカラッと中はねっとりという仕上がりは捨てたくなかった。
だから、自分で設計しました。炭火で焼いて、仕上げに石の力を借りる。焼き上がった芋を、石を敷いた保温鍋に移して10分。石のやわらかい熱で中までじっくり火が通り、皮に蜜がなじんで、しっとりにもできます。カラッと派もしっとり派も、ここで選べる。私が「炭火×石焼きの二刀流」と呼んでいるのは、この組み合わせのことです(特許取得)。
火加減は、勘ではなく構造で
壺でも石でも炭でも、最初に立ちはだかるのは火加減です。勘に頼ると難しいので、私は温度を構造で作れるようにしました。火力の調整は、外の空気と炭を直結する一本のパイプで行います。焼き始めて15分ほどで温度が落ち着き、あとは温度計を見て給気口で調整するだけ。3段階の型を守れば、初めての方でも味を再現できます。
とはいえ、初日から完璧に焼ける人はいません。売る前に数回、家で焼いてみてください。数回で、ちゃんと近づきます。
それでも、選ぶなら
固定の店先で、壺を看板にした雰囲気ごと売る商売なら、壺焼きには壺焼きにしかない魅力があります。運んで売る、量を売る、ひとりで回す、という条件が入ってくるなら、重さと本数で選ぶことになります。その逆算のしかたは業務用焼き芋機の選び方に書きました。
開業全体の流れは、7ステップにまとめています。
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